「小説 秒速5センチメートル」著:新海誠の次に読む本は

あらすじ

物語の舞台は、ちょうど年度が切り替わるいまと同じ季節の青春時代。
互いに小学校の同級生だった明里と貴樹ですが、中学を前に引っ越しが決まった明里と離れ離れになることに。
それでも、互いに特別な想いを寄せていた2人は、中学生になってからも文通で心を通わせていました。
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ラブレターで距離を縮める。
源氏物語みたいでなんだか素敵ですね。和歌ではないですが。笑

いまの小学生も交換ノートや手紙のやり取りをしているでしょうか?
もっぱら小さい時から手紙っ子だった私は、中学受験を機に別々の学校に進学した幼なじみと離れてからも大学受験を終えるまでともに近況を語り、励まし合いながらポストとレターセット選びにウキウキしていたあの頃を思い出して微笑ましくなります。
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そんな幸せも束の間、年度末で貴樹も引っ越しで遠くに移ることになり、遠く離れてしまう前に、貴樹は、明里に会いに行くことを決意しますが…
不覚にも、当日は大雪に見舞われ電車は遅延。約束の時間には大幅に遅れてしまいます。

果たして、2人は無事、再会できたのでしょうか。

読みどころ

はらはらと舞い散る桜の花びらが舞う、秒速5センチメートルの狭間で繰り広げられる幼きピュアな高校生の甘酸っぱい初恋模様が万葉集のように鮮やかで麗しいピンク色の情景が目の前に広がります。

読み終えた頃には静かな涙が込み上げてきました。

そんな桜の如く、儚さとキュンと胸が苦しくなる小説です。

honno-akari

学生時代の初恋って時間が止まったように、秒速5センチの一瞬がなんであんなに長く感じるのでしょうね。もはやこの時間がこの世のすべてだと思えるくらいに。

その後の苦楽の中で、いろんな恋の色を覚えていきますが、たった一回の青春がときにまだ見ぬ世界の逆境で大きな勇気をくれたりもしますよね。

戻れないとわかっていても…あの時あの人に出会えてよかった。
そんな淡い想い出を思い出させてもらいました。

読者の皆さんの初恋は、どんな想い出がありますか?
桜と初恋は、紅茶とクッキーのようにお揃いの記憶が詰まっている二人組ですね^^

読んだきっかけ

この作品は
いつかの東京の片田舎で、桜並木が綺麗に咲く通り沿いにひっそりと佇む古書店のオーナーさんに勧められたのが出逢いでした。
とても明るくほろ甘い純愛小説と思いきや、とても切なく、気づけば涙をこぼしながら桜色の世界観に浸っていました。

古書店主さんお元気かな?
お元気だといいな。そしてあわよくば、この記事を見つけてくれていたら…
この場を借りて素敵なひとときをありがとう、と伝えたいです。

わたしにとって、懐かしい記憶も詰まった作品です。

桜って綺麗なのに、その一瞬の美しさをカメラや心のシャッターに収めることは至難の業。
どことなく別れを連想させる、儚さが勝る哀しい花でもありますね。
日本には大体どこでもよくみられる花ですが、日常にあるのに、逃すまい、、、!と、後ろ髪を引かれる美しさがなんとも日本らしい国花に思います。

今年の春、皆さんは、どんな秒速5cmの瞬間を過ごされるでしょうか?
それぞれに素敵な想い出が溢れますように。

新生活・進学・新社会人
すべての人にとって、それぞれに別れや出逢いのドラマが巡る4月。
幸先を祈って。この本とともに、これからの季節がほんのり桜色に色づきますように**

次に読む本

「小説 言の葉の庭」著:新海誠

あれは、社会人三年目くらいだったでしょうか。

気づけば寝る前のベッドで号泣していた作品です。

・都内に住んだことがある方ならあ、あそこの駅だと街の景色を想像しながら楽しめる鮮やかな風景描写

物語の舞台は、東京の片隅であひるボートと緑豊かな自然の中にぽっかり湧いた池とジブリの森美術館も隣接した子どもたちの笑い声が響く公園、「井の頭」沿いを走る、黄色とオレンジの電車が通るまちです。

懐かしい記憶に想いを馳せながら、しとしとと降り注ぐ春雨の季節に読みたくなる小説です。

電車の車窓から眺めていた停車駅が、ポッと目の前に浮かび、いつものあの緑のベンチにかけると思わず、主人公が座っていそうな、、
馴染みのまちでリアルにいそうな男子高校生と国語教師のちょっと訳あり、ピュアラブストーリーといえるでしょうか。

離婚の経験がある家庭の少し複雑な心模様に、感情移入もしたりして…
特別な想い出を振り返りながら、読み進めました。

・控えめで素朴なリアルな人物描写

自分だけの登場人物を想像しながら物語の世界観を楽しめる細やかな表現はまさに、「言の葉の庭」のよう…
文面から膨らむ想像力と外の雨音としっとり美しく合わさる切ない情景が絶妙でした。

主人公の男の子が、ある初恋のほろ甘いエピソードをきっかけに靴職人を志す辺りで物語は終わるのですが、成蹊大学附属の高校(あったっけ?)のクラスにひとりはいそうな短髪の素朴な男の子のイメージを脳内に膨らませて、昔の同級生と重ね合わせたりして…

そんな主張が激しすぎない、実際にいそうなリアルな人物描写も、深海さんお得意の文学小説ならではの魅力ではないかと感じました。
(共感してくださる方いらっしゃるかなあ・・・笑)

honno-akari

こんなにも美しく、切ない雨のしとしとした音が聴こえてくる庭の情景…
改めて新海さんの情緒溢れる描写の豊かさ、細やかさに、感服。
アニメを観る勇気がまだ持てません…。

自分の想像の中の世界観のままに留めておくのがこの小説の良さでもあるのかも、と。

アニメもきっと美しいアニメーションだろうな。
アニメ観た方は小説とどちらが好みなのでしょう。

アニメも良かったという方はぜひ、コメントで教えてくださいね。^^

おススメポイント

honno-akari

今回は、桜と言葉の美しさを味わえる、叙情的な「新海誠さん」シリーズの2冊を選んでみました。

新海誠さんと言えば、映画が国を超えて大ヒットした『君の名は』や『天気の子』、『すずめの戸締まり』で一躍有名になった監督ですが、本2冊はその影に隠れた名作と呼べるのではないかと、いちファンの読者として感じます。

アニメ向き(実写や映画化で映える作品)な小説と小説のままが魅力を増す作品があると思いますが、この2冊は、日本らしさも味わえる後者だと感じますね。

小説だからこそ、読者一人ひとりの自分だけの記憶と重ねながら、作品の世界観に浸れる作品もこれからもたくさん増えてほしいなと思います。

さて、この週末は桜舞い散る雨上がりの午後に、この2冊を携えてさくら色の公園に出かけてみませんか?




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