『レイラの最後の10分38秒』 エリフ・シャファクの次に読む本は

あらすじ

1990年のイスタンブルの路地裏で、レイラは息絶えようとしていた。心臓が鼓動を止めても、彼女の意識は10分38秒の間続いていた。

その意識の中で、レイラは幼少期を思い出し、その後出会った5人の友人と最愛の人と過ごした日々を思い出す。

辛い中にも喜びがある、1人の女性の人生の物語。

ゆめこ

この物語は3部で構成されており、それぞれ「心」「体」「魂」と題名がついている。

第一部の「心」では、厳格な父の元で育ったレイラの幼少期が描かれる。レイラは辛い経験をするのだが、両親に守ってもらえない。ついに家出をして大都会イスタンブルへ向かうが、ここでも辛い出来事は続く。

レイラの5人の友人についても描かれるが、皆病気やトランスジェンダー、夫からの暴力や人身売買などを経験している。生きづらさを抱えてきた彼らだが、不思議と5人とレイラの交流には暗さよりもユーモアや明るさが感じられ、レイラがどんな時も自分を見失わずに生きてきたことが伝わる。

そして第二部では、当時イスタンブルで多発していたという娼婦連続殺人事件に触れられ、レイラがなぜ死んだのかというミステリー要素も含み、徐々に物語は少し予想外の展開を迎えていく。

社会問題にも触れながら、レイラの純粋な愛や5人の友人達との絆についても描かれ、様々な側面を持つ小説である。

次に読む本

『地下道の少女』 アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム

真冬のストックホルムで、バスに乗せられた43人の子供が市内に置き去りにされた。

同じ頃、病院の地下で女性の死体が発見された。

グレーンス警部と部下達は、2つの事件の捜査を開始する。やがて彼らは、地下道で生活する人々の存在を知った。

ゆめこ

シリーズを通してとにかく重い内容の社会派ミステリー。

これが現実に基づいた話だというので驚く。

地下道に身を隠して生活する少女が登場するのだが、文中に「問題を抱えている女の子は、静かで目立たない。男の子は、往々にして暴力的になり、周囲の目を引きつける。対策が講じられる。ところが女の子は目につかないまま消えてしまう。」という記述があり、やるせない気持ちになった。

グレーンス警部は常に苛立っているか怒り狂っていて、事件に集中するあまり周りを巻き込む。物語の結末も決してすっきり気持ちの良いものではないが、それでも最後まで一気に読み進めてしまう魅力がこの小説にはある。

グレーンス警部の人間らしさや彼が抱える悲しみも丁寧に描かれ、重厚な内容でお勧めのミステリーである。

おススメポイント

ゆめこ

どちらも女の子であるが故に辛い経験をするが、誰にも守ってもらえずに家から逃げ出してしまう少女の物語。

社会的弱者が懸命に生きていく様子が描かれ、

様々な国の抱える社会問題について考えさせられる。

辛く悲しい描写も多いが、登場人物達の人間らしさが味わえる奥深い作品である。




この記事を応援する


Stripeで決済します。カード番号を入力してください。


コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


「自動計算」へのリンク