あらすじ
事故や自殺のニュースを目にするとその死亡者のSNSアカウントを特定する佑希子、漫画家になるのを諦めた豊川、会社から切られることが決まった谷沢依里子、考えることは半径5メートル以内で精一杯な由布子など現代の日本で生きるそれぞれの現実をとことんリアルに描いた6つの短編集
読み進めるのがとても大変な小説だった。フィクションであることは分かっているものの、確実にこの小説に出てくる人々は現実のどこかに存在しているだろうなというリアルさがあって、直視したくない現実を見せられたような気分になった。
自分はこの現実の中でどうしても生きていかなきゃいけないんだと感じた。
次に読む本
夜が明ける(西加奈子)
フィンランドの俳優、アキ・マケライネンになりたいと願う深沢暁と”俺”の物語。二人は高校で出会い、”俺”の「お前はアキ・マケライネンだよ!」の一言で深沢暁はアキとなった。高校卒業後、別々の道を歩み始めた二人。それぞれが己の選んだ道、選ばざるを得なかった道で苦しみ、抗いながら生きていく。
アキと”俺”の人生を見ていると、心が苦しくなることが多かった。だが、二人のことは自分がなかなか直視できていない現実でもあると思う。そして、彼らは助けを求められなかったからこそ、とても苦しい思いをしたのだと思う。辛いとき、誰かに「助けて」と言える勇気を持つことが大事だと感じた。
前向きになれるラストで主人公の二人だけではなく、読者である自分にも希望が見えた。
2つの小説に共通するのは直視したくない、できていない”現実”である。普段、現実を生きているのに現実を直視するのは難しい。いつもは小説の世界へ現実逃避してしまうけれど、たまにはしっかり現実を見るのも必要なんじゃないかと思わせてくれる小説。そして、「どうしても生きる」を最初に読んで、「夜が明ける」を読むことをおすすめしたい。「夜が明ける」のラストで希望を持ってそれぞれの現実に戻って欲しい。
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