あらすじ
「現象としての人間」の著書はイエスズ会の司教であり科学者であるという異色の神父です。彼が本書の中で試みたのは科学とキリスト教の統合でした。著者の生前、本書はイエスズ会から出版を認められず、死後まもなく1950年にようやく刊行されました。 彼は本書の中で神父でありながら、一般的な神の存在を科学的に否定します。地球の誕生と宇宙とのつながり、原子の構造にまで言及しながら、将来、人類は<オメガ点>にいたると予想します。オメガ点とは肉体という枠を離れた高次の意識(知性)だけの存在を指す言葉です。オメガ点こそいわば神のような存在であり、これにより著者は科学とキリスト教の統合を果たします。
次に読む本
ティール組織(フレデリック・ラルー)(訳:鈴木 立哉)
製造業、エネルギー、医療、教育etc、業界の枠、国境の枠も越えて全く新しいモデルで圧倒的な成果をあげる組織があります。それらの組織には共通の特徴があり、その特徴をもつ企業をティール組織と呼んでいます。ティール組織には売上目標も役職も予算も存在しません。必要な情報は全て社員に共有され、そして全ての社員が同等の決定権を持っています。 本書の中で、現在の組織構造の主流は組織を機械とみなすことで成立していると指摘します。そして、そのように組織を見なすのは、「従業員はトップがコントロールしなければ真面目に働かない」という性悪説を前提としていると批判します。そのような組織階層の中では従業員は疲弊し、お金を稼ぐためだけに働くようになります。
一方でティール組織では組織を生命体とみなし、人々は自分の信念に従って行動することを求めます。会社の利益はその行動の結果としてついてくるおまけと考えます。そうすると、従業員は外部からのノイズから解放され、自分の内面に働きかける事で、結果として外部を満たすというパラドックスを達成します。 また、全ての組織がティール組織となった時、組織同士は互いに協働しあい、しだいに組織間の境が曖昧となり、組織という概念そのものが消えると予想します。
マネジメントの常識を覆したティール組織の運営を実例を交えて紹介されているため、経営者にこそ読んで欲しい一冊です。
「現象としての人間」で予想されている人類のオメガ点化は、理解はできますが、あくまで思想の話で実践的な知恵とはいえないというのが本書を読んだ当初の正直な感想でした。 しかし、「ティール組織」の読了後、肉体を組織と捉え、意識を組織内の活動ととらえた場合、ティール組織は人類のオメガ点化に対する1つのアンサーだと気づきました。 1950年に出版された思想の本が、2018年の現代において、ティール組織という形で出現するという世代も国境も超えた数奇な繋がりを感じさせてくれます。
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