あらすじ
小学校高学年で学ぶ「日本国憲法」を、それより幼い子供たちも理解できるように丁寧で解りやすくまとめられている。
日本国憲法の三原則である「基本的人権の尊重」「国民主権」「平和主義」をそれぞれ一章ずつに分けられているので、後の社会科への予習も兼ねつつ、学校生活でのトラブルなどにも対応している。
ひとつの問題に対して、憲法が無い世界と、憲法がある世界の二つの様子が解りやすいイラストで書き分けられているため、やや難解な憲法の条文も理解しやすい。
12歳以上の学生さんなどにもおすすめしたい一冊。

タイトルに『12歳までに…』とあるが、大人も一度読む意義のある本だろう。
子供社会は、ある意味で大人よりも「力ずく」がまかり通ってしまい、発言力や腕力に乏しい者が泣き寝入りすることも数知れない。
自分も小学生時代にこの本を読み、理解ができていれば、別の結果を出せていたであろう問題が多々あった。
『憲法』という言葉の重々しさに腰が引けてしまいそうだが、これから多様な知識を身につけていく子供たちの土台に、日本の憲法として明文化されていることを知る意味は大きい。
学校教育が個性の尊重に重きを置いているとしても、やはり集団の一員としてぶつかる問題の数々。
小学校六年生の社会科で「基本的人権の尊重」「国民主権」「平和主義」という言葉だけを暗記する前に、学校内で起きる大小の問題の解決にも、教師と生徒であったり親と子での対話として、この本を一緒に読み、考えることで深い思慮と生きた知識が得られるはずだ。
本書で取り上げられるエピソードも、子供たちの間でよく起こる事例と、親しみやすいイラストが多く載せられているため、「憲法を学ぶ…」と堅苦しくなることなく、成長過程の子供たちならばコミックを読むような感覚で知識を身につけていくことが期待できる。
しかし、ひとつ気がかりがあるとするならば…「憲法ではこう決められているのに、大人たちはそれを守っていないように見えるのだけど?」と訊かれた時の、忖度社会に浸かりきった大人たちの答えの方かもしれない。
次に読む本
『日本国憲法の二〇〇日』著作:半藤一利
太平洋戦争末期から、日本が再び立ち上がる濃密な二〇〇日を、14歳の少年だった著者の視点から解りやすく語られる。
17の章に分けられている本書だが、各章の終わりには、歴史的には語られないであろう著者のプライベートなできごとも載せられ、読んでいる自分も終戦後の景色を見ながら日々を追っているようにページをめくる手が止まらない。
ときどき登場する、著者・半藤一利さんのお父様も明晰な方だと感じさせる存在感だ。
日本国内で状況の変化があった際にお父様がつぶやく一言にも含蓄があり、当時を生きた大人からの視点という良いアクセントを与えている。

1945年8月15日の大日本帝国降伏から、憲法改正草案要綱の閣議決定までの二〇〇日を著者の体験談を軸に、その紆余曲折をまとめた一冊。
『日本のいちばん長い日』などの硬質な歴史作家である著者の難解なドキュメントか?と本を前に身構えてしまうが、読み始めると半藤一利少年が見た、終戦後の日本の混乱をユーモラスに描写している。
さすがに「エッセイ」と呼ぶには重すぎる二〇〇日だが、終戦を境に軍国主義から一転、民主主義に堂々と鞍替えする人間の強かさと図々しさを冷めた眼で観察する日々の記録。
それは戦争体験も無く、敗戦国の惨めさも知らない者にとって、読む手を止められない興味深さがある。
終戦をもって一部地域を除いて、戦争の恐怖は去ったものの、困窮を極める敗戦国としての日本。
その再建も喫緊の課題ではあるものの、GHQは日本の政治家も予想だにしていなかったスピードで憲法改正に着手してゆく。
かつての輝かしい姿を失った焦土の日本ではあるが、「天皇制」が変わることなどあるわけがないという大前提が揺らぎ始めて、ようやくとてつもなく大きな変化の時代に生きていることを自覚する人々。
戦中戦後を生き抜いた賢者の視点と言葉に気づきが詰まっている。
日本という国が根本から覆る革命的な狂乱の二〇〇日を濃厚に、かつ楽しく読める名著である。

『ぼくらの憲法』には「大日本帝国憲法」時代の不平等さなども著されている。
国民主権を得たことにより、選挙における有権者は戦前が総人口の20.4%だったのに対し、戦後は総人口の51.2%となった。
人権の尊重も認められ、平和主義も確立し、現在の日本の姿へ向かう形は整った。
では、「大日本帝国憲法」下での国民は不幸だったのか?という問いに『日本国憲法の二〇〇日』を読んだ後、強く断言はできないだろう。
その過渡期に国民は混乱し、不安や恐怖を覚えた。
自分たちを守るルールが変化する時、新しいものがすべて良い結果を生み出すばかりではない。
新旧の憲法で目指したものは何であって、それは成功したのか失敗したのか。その結果を踏まえて継続してきたものと、変革してきたもの。
万事、今が最高だ…という思考停止に陥ることなく、過去の日本が歩んだ道を振り返ることにより、今現在をさらに深く知ることが期待できる。
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