『神様ゲーム』麻耶雄嵩の次に読む本は

あらすじ

ある日、主人公たちが暮らす神降市で勃発した連続猫殺し事件。主人公である芳雄にとって憧れの同級生・ミチルの愛猫も事件の犠牲になってしまいます。
奇妙な事件を受けて、町が騒然とするなか謎の転校生・鈴木太郎がなぜか事件の犯人を瞬時に言い当てるのみならず、彼は神様を自称し、「世の中のことは全てお見通しだ」と豪語します。
彼の言葉はにわかには信じがたいものでしたが、やがて鈴木の予言通りに、今度は猫殺しではなく殺人事件が発生し、芳雄にとって彼の言葉を無視することが難しくなっていきます。

物語の筋書きは非常にシンプル……とみせかけて一筋縄ではいかない、麻耶雄嵩の真骨頂であり、また入門書としても最適な1冊。

作品の性質上、ネタバレは避けています。

1991年に『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』で衝撃のデビューを飾って以来、寡作ながらも、読み味が独特な本格ミステリーを精力的に発表し続けている麻耶雄嵩。

本作は講談社文庫に収録されていますが、もともとは2005年7月に、【講談社 ミステリーランド】と呼ばれる児童向けのレーベルで発表されたものです。

ネタバレをせず本作の感想をひと言でまとめるなら、「児童向けのレーベルでよくもこれだけ思い切ったことをやってのけたな」という言葉につきます。
ミステリーファンの間ではすっかりおなじみですが、麻耶雄嵩といえば普段から「問題作」と呼ばれる作風で孤高な闘いを続けており、ある意味ではカルト的な人気を誇ります。

そして、この「問題作」の読み味は今作においても衰えることなく、むしろこれまで以上に力を増して読者を振り回します。私の場合は、読了後30分ほど、ずっとこの作品のことばかり考えていました。

またこの本の帯には、人気ミステリー作家・綾辻行人による「この事件の恐るべき真相を、あなたは正しく理解できるか!?」という挑戦的なコメントが寄せられています。このコメントも非常に秀逸ですが、私はあえてここにもう一つのコメントを加えます。

おそらく世界でいちばん有名な名探偵・シャーロック・ホームズによる「不可能を排除すれば、どんなにありそうもなくても、残ったものが真実となる」という名セリフです。

人間にとってはにわかに信じがたいことであっても、全知全能を自認する神様にとっては、すべてのことが「ゲーム」にすぎないのだと、思わず唸らされます。

次に読む本

『さよなら神様』麻耶雄嵩

「真実は神のみぞ知る」という格言を地でいくような、型破りな神様探偵・鈴木太郎が活躍する連作短編集で、1冊目に紹介した「神様ゲーム」の続編に当たります。

各短編は必ず、神様・鈴木の「犯人は〇〇だよ」というセリフで幕を開けますが、彼は犯人の名前を教えてくれるだけで、なぜその人物が犯人なのか、具体的なトリックや動機などは一切教えてくれません。そもそも神である彼にとって、わざわざ人間の社会に干渉して様々な事件の犯人を提示するのは単なる退屈しのぎにすぎず、なにもかも人間に教えてしまうと「面白くない」から教えないのです。

自称神様・鈴木が久遠小探偵団のメンバーをかき回し、衝撃的な展開でミステリー界を震撼させた、本格ミステリ大賞受賞作。

作品の性質上、ネタバレは避けています。

神様・鈴木が各編の1行目に事件の犯人を教えてくれるため、例えば古畑任三郎や刑事コロンボのように倒叙型ミステリーに分類できるのですが、手に取ってみた率直な感想は、「そんなに生ぬるいものではない」というものでした。

登場人物や読者にとっては犯人の名前しかわからない状況で、あらすじでも触れたとおり具体的なトリックや犯行の動機などは不明。考えなければいけないことが多すぎるため、読み進めながら本を持つ手がむずむずしますが、この感覚がやみつきになるのです。

登場人物たちと一緒に頭を抱え、作者の掌で踊らされながら一癖も二癖もある犯人当てのゲームに挑み、結末では絶妙な陶酔を味わってみませんか。

おススメポイント

神様を自称する謎の転校生・鈴木太郎がひと言で犯人の名前を言い当てるという、共通のコンセプトを持つ作品。

ともに同じ著者によるシリーズ作品であるという以上に重要なポイント、それは、ともにネタバレ厳禁の作品であるというだけでなく、「ネタバレすることさえ難しい」ということ。1冊目の感想でも紹介したとおり、ミステリー作家・綾辻行人のコメントは伊達ではないのです。

犯人も、トリックも、さらには犯行の動機さえも設定されているミステリー作品において、「ネタバレすることさえ難しい」とはいったいどういうことか、その理由はぜひとも本書を手に取って、ご自身の目で確かめていただきたいです。

しばしば指摘されることですが、どれほど純度の高いミステリー作品であっても、物語の冒頭から結末まですべての伏線が納得のいく形で回収されるということはまずありません。規模の大小や数に差はあれど、必ずツッコミどころは存在します。

ツッコミどころをすべてクリアにして潰し、あらゆる伏線を完璧に真相へと結びつけることはミステリーというジャンルの特性上不可能で、物語の崩壊を防ぐために、必ずどこかに妥協が生じるという永遠のジレンマがあるのです。

しかしながら、もし、とてつもない力量を持つミステリー作家が、上記の命題と真摯に向き合って本格ミステリーという「ゲーム」の純度を極限まで高めようと試みたら、いったいどのようなことが起こるのでしょうか?

その理由はぜひとも本書を手に取って、ご自身の目で確かめていただきたいですと、あえて繰り返します。
同じ言葉を二度繰り返さなければならないほど、麻耶雄嵩の作品は「異常」なのです。
そして、この作者に限って「異常」という言葉が最上のほめ言葉になってしまう、これこそがまさにミステリー。




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