82年生まれ、キム・ジヨン(チョ・ナムジュ)の次に読む本は

あらすじ

キム・ジヨン、33歳、女性。
3歳年上の男性と結婚し、女の子を出産した1年後、彼女に「異常な症状」が見られた。
夫の勧めで精神科のカウンセリングを受けることになった彼女の半生を、カルテを通した形で振り返っていく。
そこからは、女性として経験してきた差別などの負の体験が次々に浮かび上がってくるのだった。

キム・ジヨンが1982年に生まれた時から2015年に変調を来すまでの人生を、読者は追いかけます。
その人生のあらゆる状況で顔を出してくる差別の多いことといったら。
同じ女性として、自分の人生においてはどうだったかと考えさせられます。

特に就職・結婚・育児辺りについては、まだまだ女性側に不利な面も大きいのが現実かと思います。
男性の育児休暇取得が促されるなどといった社会の多少の後押しがあったとしても、肝心の男性の意識がどこまで変わっているのかは疑問が残ります。
そうした状況を、私自身が心のどこかで仕方ないと思っているのでは?と感じていました。

作中では、長期のプロジェクトメンバーの選定において、離脱の可能性があるとして女性を除外した社長の話もあります。
それはおかしいと思う一方、そういうものだろうと諦めを覚えている節もあって、私は”そういう”社会にすっかり毒されていたのかなと落ち込みました。

女性の負の体験をただ紹介されるのではなく、小説として描かれていたので、読者としては非常に受け取りやすい形になったと思います。
女性にも男性にも一度は読んでみてほしい作品でした。

次に読む本

韓国文学の中心にあるもの(斎藤真理子)

『82年生まれ、キム・ジヨン』をはじめとした韓国文学の翻訳にも取り組んでいる著者。
日本でも韓国文学を集中的に読む人が増えているのはなぜなのか。
その韓国文学の魅力や、根底に流れている思想はどういうものなのか。
韓国文学の読書案内であると同時に、朝鮮戦争以降の歴史の概略をも示してくれる本。

韓国文学は何冊か読んだものの、たまにピンとこない部分があるなと感じていました。
そのモヤモヤ感が多少払拭できるのではないかと思い、手に取った本です。

本の構成としては、2010年代後半から始まって1945年まで遡っていく形になっています。
各時代の歴史的な出来事や、それにまつわる韓国文学について語られていく流れです。

読み進めていくと、「韓国文学を読む上で、いちばんの要となるのは朝鮮戦争だ。」という文章がありました。
戦争を体験した人の作品に限らず、若い世代の作品でもそうだというのです。
この朝鮮戦争についても説明があるわけですが、それを読んで、自分がいかに何も知らなかったのかを痛感しました。
韓国文学を理解できなくて当然だったのかもしれません。

この本を読み終えて、韓国文学が理解できるようになったかどうかはわかりませんが、最初のモヤモヤ感は払拭できた気がします。
韓国の歴史についても多くの学びがあったので、そういう面からもおすすめできる本でした。

おススメポイント

文庫版の『82年生まれ、キム・ジヨン』では、著者や訳者のあとがきの他に、解説や評論文も載っています。
それを読むだけでも参考になるのですが、更に理解を深めるのに役立つのが、『韓国文学の中心にあるもの』です。

第1章のタイトルは『キム・ジヨンが私たちにくれたもの』で、まさにその話題です。
キム・ジヨンの小説の内容だけではなく、日本や韓国での作品の広まり方や、キム・ジヨン以前のフェミニズム文学、韓国の情勢などにも触れられています。

『韓国文学の中心にあるもの』は読書案内の面もあるので、これを読んでから様々な本に手を伸ばすのが素直なルートだと思います。
ではなぜ『82年生まれ、キム・ジヨン』を1冊目に挙げているのかと言うと、これについては自分だけの素直な感想が持てるように、なるべくまっさらな状態で読むことをおすすめしたいからです。
そこで生まれてきた感想とよく向き合うと、色々な発見があるのではないかと感じました。




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