「ネガティブフィードバック『言いにくいこと』を相手にきちんと伝える技術」(難波猛 著)の次に読む本は

あらすじ

本書は、上司が部下との信頼関係を保ちながら、伝えにくいネガティブなフィードバックを効果的に伝える技術を解説しています。終身雇用の崩壊や転職の一般化、ジョブ型人事制度の導入による年上部下の増加などにより、上司が部下に厳しいアドバイスを伝えることが難しくなっています。しかし、フィードバックを避けると部下の成長を妨げ、上司としての責任も果たせません。

著者は、部下の認識と行動のギャップを「WILL」「MUST」「CAN」の視点で整理し、問題解決に向けて共に取り組む姿勢を提案しています。日常的にポジティブなコミュニケーションを重ねる一方で、嫌われることを恐れず、相手の成長を本気で考えてギャップを指摘することが求められます。その際、論理だけで説得したり論破したりするのではなく、部下の感情に配慮し、対話を通じて考えを整理してもらうことが重要です。

そら丸

上司は自分のWILLだけでなく、弱み、仕事内容をもっと部下に開示した方がいいと思いますね。他人の欠点を指摘するの簡単であり自分が思っているほど賞賛の言葉は部下の心に届いていないことが多いので、50%増で良い点を見つけて普段から伝えつつ、抽象的なべき論や自分の感情からの言葉を避け、ギャップをどう埋められるかの対話が重要なのでしょう。

次に読む本

「組織戦略の考え方 企業経営の健全性のために」(沼上幹 著)

官僚制組織にはネガティブなイメージがつきまといますが、その規則とヒエラルキーの基盤が整った組織では、メンバーが自分で判断可能な問題をミスなく解決し、迷う場合は即座に上司に委ねるといった作業がスムーズに行われます。この基盤が整っているからこそ、創造性や戦略性を発揮する余地が生まれるのです。不確実性が高まり、例外処理が多くなる場合は、官僚制を打破するのではなく、知的能力を向上させる従業員教育、上司を補佐するスタッフ設置、情報技術の活用、事業部制やプロジェクト制、マトリクス組織などの水平関係の創設といった工夫が求められます。

さらに、組織を円滑に運営するには、メンバーの承認や尊厳欲求を満たすことが重要です。これにはポストや報酬だけでなく、成功体験を積ませる、誠実な感謝の言葉を伝える、努力を見守る姿勢を示すといった多面的な取り組みが効果的です。しかし、生身の人間が集まる組織では、他人の仕事にケチをつけるフリーライダーや社内野党化する人材が生まれるリスクもあります。そのため、組織の長期的運命と一体化しているコア人材を育成し、組織のまとまりを保つ努力が不可欠です。

また、組織運営には、大胆で不連続な決断が求められます。例えば、フルライン・フルスペック要求や不要なプロジェクトの乱立、短期的に成果を出さない人材育成プログラムが現れると、決断不足の兆候とみなされます。こうした場合、トップが検討委員会を減らし、重要な仕事を決断可能なエースに任せるなどの対応が必要です。

さらに、組織腐敗の要因として、厄介者や噂を流して権力を広げる「キツネ」の存在が挙げられます。インターネットを通じた密告も新たな権力を生む要因となり得ます。これを防ぐためには、トップマネジメントの数を絞り、内向きの調整活動だけで評価しない仕組みを整え、外向きの価値創造に集中できる組織デザインを追求することが重要です。

そら丸

昨今の組織運営において、多様な人材活用、組織文化の変革、デジタル技術を活用した生産性向上、エンゲージメント向上などが話題に上ることが多い中、本書は組織基盤としての官僚制の本質、意思決定が出来ない組織や権力の腐敗構造などの実態と対策にふれており、経営者、マネージャーにとって新鮮な気づきを提供してくれます。一定のふるいにかけて採用した組織メンバーですが、人の本質を考えると観察力を鋭敏にして良い雰囲気づくりとまとまりを保つ不断の努力が必要と言えますね。

おススメポイント

そら丸

「ネガティブフィードバック」と「組織戦略の考え方」は、現代の組織運営とリーダーシップにおける課題に焦点を当て、相互補完的な視点を提供しています。前者は部下へのフィードバックという個別的な関係性を深掘りし、後者は組織全体の構造や戦略を描写することで、リーダーが直面するミクロとマクロの両面を包括的に理解する助けとなります。

選定理由として、どちらも変化の激しい現代社会におけるリーダーシップの在り方を問い直し、深い洞察を与える点が挙げられます。『ネガティブフィードバック』は、部下の成長を促すためのコミュニケーション技術を提供し、『組織戦略の考え方』は、組織のまとまりや腐敗防止、戦略的な意思決定の重要性を説いています。リーダーとして部下をどう導くか、そして組織全体をどう運営するかという課題に対し、双方が実践的な示唆を与える点で価値があります。

おすすめポイントは、リーダーの役割を「人を育てる」側面と「組織を進化させる」側面から学べる点です。『ネガティブフィードバック』では、嫌われることを恐れず部下の成長を促す技術が詳細に解説され、『組織戦略の考え方』では、組織の規律と柔軟性のバランスを取る方法や、腐敗を防ぎながら意思決定をスピードアップさせる実践的な手法が紹介されています。この2冊を併読することで、現場レベルから経営層までの視座を得られ、個人と組織の両面からリーダーシップを深く考えるきっかけを得られるでしょう。




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