あらすじ
新年度がはじまった4月に東京都立櫓門(やぐらもん)高校文芸部の二年生で部長を務める吉徳紅乃(よしとく くれの)は、先輩の木虎礼登(きとら あやと)と共に、新入生に文芸部に入ってもらうために声をかけたり部員集めに奮闘する。
文芸部の顧問である河津先生の提案を受け、短歌初心者が多い中で、8月に開催される短歌甲子園に挑戦することに。
紅乃含む1、2年の文芸部員たちは、短歌甲子園に出場するために短歌の腕を上達させるために努力していく。
等身大の言葉で瑞々しく競い合う高校生たちの熱い青春小説。
作者の宮田愛萌(みやた まなも)さんによるオリジナル短歌を約六十首収録。
物語を通して、短歌って気軽に作れて楽しめるものであることを教えてもらえました。
国語に苦手意識を持っている人も物語を通して、好きな歌の歌詞を分析するかのように短歌が身近な存在に感じられると思います。
そして、短歌甲子園に行くまでの文芸部員たちの苦悩葛藤が青春時代を思い出させてくれました。
紅乃たちがみんな「どの短歌もすてき」と口を揃えて言っていたように、作品にはいろんな思いがあり、甲乙つけること自体難しい。
それほどすてきな短歌が物語の中にたくさん散りばめされています。
高校生たちが生み出した短歌の中から好きな1首をぜひ見つけてみてください。
次に読む本
『北村薫のうた合わせ百人一首』(北村薫)
短歌は、巧みに織り込まれた謎であり、言葉の糸を解きほぐして、そこに隠された暗号を解読するもの。
歌と歌を繋ぐ見えない糸を探りながら、向き合い、背を向け、また離れてもなお共鳴し続ける歌の響きを感じ取る。
作者の北村薫(きたむら かおる)独自の美意識で組み合わせた現代短歌50組100首が収められており、塚本邦雄と石川美南、三井ゆき、佐佐木幸綱に至るまで、計550首の短歌を収録。
長年文学作品に触れてきた北村氏の鑑賞眼でその魔力を存分に楽しむことができる、これまでにない刺激的で読み応えある短歌随想。
昭和初期の言葉は、今の私たちと違う言葉を使っているので読みづらい人もいるかもしれないです。
しかし、本書を読み進めていくと、短歌を味わい、意味を理解しようとする北村氏の様子が伝わり、読んでる私までワクワクした気持ちになりました。
母校に行ってまで短歌の詳細を調べてくるといった行動力には北村氏の短歌愛を感じさせます。
読んでいるうちに、短歌が楽しいものかもしれないと興味が湧いてくるでしょう。
550首という数の中には、私たちも共感させられる短歌もたくさんあります。
あの頃の時代の人が何を感じ言葉にしたのか、北村氏と一緒に考えながら読んでいきましょう。
おススメポイント
『春、出逢い』で今の時代の短歌を味わった後に北村薫氏が選んだ昭和初期前後である現代短歌を学ぶのは、短歌初心者には、いい流れで読み進められると思います。
『春、出逢い』に出てくる短歌の中に実はアルファベットのある文字を使った歌も出てきます。
文学に詳しくない人も「自由に作って詠んでもいいのかも」と小説読み終わった後に感じられるでしょう。
『春、出逢い』を読んだ後に北村氏の選んだ有名な歌人の短歌に触れることで、短歌に興味を持った状態で楽しく勉強したくなると思います。
国語に苦手意識を持っている人にこそこの2作品を続けて読んでほしいです。
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