あらすじ
大学の野球部を目のトラブルで退部した岸谷奏多(きしたに かなた)は、大学を辞めて実家に戻ろうとしたところ、オプトメトリストを名乗る「眼鏡屋 視鮮堂」の店主・天宮玲央(あまみや れお)に引き留められて、ひょんなことから共同生活を始めることになる。
奏多が居候するための条件は、店と住居の掃除、玲央の祖父と仲の良いご近所さんの将棋相手、そして食費を負担することだけ。
視鮮堂は毎週水曜の夜に一人の客を迎え、その人に最適な眼鏡を作る特別な店だ。
週1回の営業にも関わらず、視鮮堂には次々と特別な眼鏡を求める客が訪れていく。
奏多と玲央お互いが自分を救ってくれた相手だと思っている。
奏多は野球ができなくなった絶望を玲央に救ってもらえたと思っているし、玲央も野球で活躍する奏多の姿をTVで見て心救われていた。
お互いが心配し、助け合う姿は友情、家族愛を越えた特別な関係のように見える。
視鮮堂から生まれる眼鏡は唯一無二。
眼鏡を求めたお客さんを必ず満足させるのは、玲央のスマートな対応はもちろん、奏多の親しみやすい人柄が魅了しているのだろう。
「こんなお店に行ってみたい」と思わせてくれる温かい雰囲気を味わえた作品だった。
次に読む本
『強運の持ち主』著者・瀬尾まいこ
元OLのルイーズ吉田は、ショッピングセンターの片隅で占い師として新たなスタートを切った。
営業職で培った話術と鋭い直感を活かし、多くの人々の悩みを解決していく。
しかし、さまざまなタイプのお客が訪れる中、彼女が手に負えないケースも少なくなかった。
例えば、「お父さんとお母さん、どっちを選ぶべきか?」と悩む小学生や、占いが外れても何度も通う女子高生、「自分は未来の結末が見える」と言い出す大学生などが現れる。
そんな中で、強運の持ち主と占いで出たルイーズの同棲相手の通彦の運勢の雲行きが怪しくなっていることに不安になり、ルイーズは占いを使ってさまざまな行動に出る。
心温まる連作短編集。
占いを使わず適当に鑑定するルイーズには最初は嫌悪感を抱いた。
だが、占いじゃないところで悩みを打ち明けたお客さんのことを調べて答えを出そうと奮闘するルイーズはやはりどこか憎めない占い師。
ルイーズの元にやってくるお客さんはみんな思いやりあふれる人ばかりでとても心温かくさせてくれるシーンが多い。
また、ルイーズと同棲している通彦との家でのやり取りもほのぼのしていて癒やされた。
心ほっとしたいと思ったときに何度も読みたくなる作品だった。
おススメポイント
この2作品の共通するところは、どちらも登場人物が“お客さんのために”頑張ってサービスをしようとしているところ。
奏多も玲央もお店を出てあらゆる場所に出向いて調べて最高の眼鏡を届けようとするし、
ルイーズも占いだけでなく、占いに来た人の私生活を調べ抜いて最適な答えを導こうと奮闘する。
どちらも“誰かのために”頑張る姿に心打たれ、感動させられた。
誰かを思い行動する心温まるシーンが多いこの2作品を続けて読んでみてほしい。
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