東京都同情塔(九段理恵)の次に読む本は

あらすじ

建築家の牧名沙羅は、大規模なタワー建築プロジェクトのデザインコンペに参加するための構想を練る。そのタワーは、ザハ・ハディド案が採用された新国立競技場が建設された新宿に、『同情されるべき人々』である犯罪者や受刑者を尊重、支援するための施設として建築される予定である。

夜長月

言葉や表現、脳内での思考にすら検閲をかけ、言葉と向き合う牧名と、『致命的な文盲』と評され、無機質な言葉を無限に産み出す生成AIの対比が魅力的な作品。
本作品は第170回芥川賞を受賞していますが、その受賞会見で、著者が「全体の5%ぐらいはおそらく生成AIの文章をそのまま使っているところがある。」と発言し話題となりました。小説自体をAIが書いているわけではありませんが、所々で生成AIが生み出す文章が活用されており、その無機質さが際立ちます。

次に読む本

生成AIで世界はこう変わる(今井翔太)

2022年11月に公開されたChat GPTを火付け役とし、生成AIと呼ばれる一種の人工知能技術が広く使われるようになった。生成AIは、人間が生み出した文章や画像、音声などの膨大なデータから、その背後にある本質的な構造や表現をとらえ、「この世にない新しいもの」を生み出すことができる。その活用により、世の中は今後どのように変わっていくのか、我々人間の仕事へどのような影響を与えるのか、そして、『創作』の価値はどうなるのか。

夜長月

なんとなく触れたことはあるけれど、理解しているかと問われるとそうとは言えない生成AIについて、基本から今のトレンドまでわかりやすく解説された一冊。
本書の4章では、クリエイティブ産業に生成AIが与える影響について議論しています。生成AIをツールとして使いこなすことで生産性の向上が期待されることはほぼ間違いないと言えるものの、あくまで「使う側」としての意識を持ち続けることが我々人間の課題であると感じました。

おススメポイント

夜長月

「東京都同情塔」の中で、牧名は生成AIを『文盲』と表現し、言葉やその背景と向き合う強さを持たないことを批判します。一方で、「生成AIで世界はこう変わる」の中で語られているように、生成AIの産み出す言葉は既に私たちの生活にも大きな影響を及ぼしています。

Chat GPTをはじめとした様々な生成AIの台頭により、私たちはこれまでよりも早く、文章を生み出すことが可能になりました。「東京都同情塔」ではあくまでAIの表現として使われていた文章が、人間の書く文章に溶け込み、一つの作品となる未来もそう遠くないかもしれません。そんな世の中だからこそ、一つ一つの言葉と真摯に向き合う牧名から学ぶべきことがあると考えます。




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