あらすじ
貧困にあえぐ苦学生の真央は、友達も、恋人も、将来の希望なんてもっとない。そんな息苦しい毎日を送る中、アルバイト先のスーパーマーケットで出会ったのは、カリスマ試食販売員のおばさん・四葉。「ちゃんとした人にはたった一回の失敗も許されないなんておかしい」と熱っぽく語る四葉は、真央に宝石箱を託す。真央は、その宝石箱で人生を変えられるのか。
この作品の題名にもなっている「オール・ノット」(All knot)は真珠のつなぎ方のことで、決してばらばらにならない技法のことだという。この題名にはもう二つの意味が掛けられていて、「All not」で全部ダメと全部ダメとは限らないという意味だ。
貧困にあえぐ真央は、いくつもの窮地に陥ってしまうけれど、オール・ノットのような繋がりをみせるこの物語の結末に希望とエールを感じます。私はこの本を読んで、失敗したとしても全部ダメってわけじゃないというメッセージを感じました。今前に進みたい人、進もうと立ち止まっている人に勇気を与える一冊だと思います。
次に読む本
希望が死んだ夜に(天祢涼)
14歳の女子中学生冬野ネガは現在、母親の映子と川崎市登戸のボロアパートに暮らしている。母はあまり働かなくなり、生活保護も断られた。まわりに頼れる大人や友人がいないネガだったが、あるとき、運命的な出会いをした……。
ネガは貧困ゆえにある友達と出会い、そこから人生に色がつき始める。しかし、14歳という年齢はあまりにも無力であった。バイトをしてもばれて辞めざるを得なくなり、社会の最後の砦であるような生活保護すらも受けられない社会の現状に直面する。
貧困ゆえに起きてしまった壮絶な事件を前に、私たちは貧困問題、生活保護、これらの社会問題が他人事ではなくなってしまう。この本は、そんな社会問題に対して読者に問いを残す物語でありながら、素晴らしい社会派ミステリーであるとも思いました。
おススメポイント
「希望が死んだ夜に」と「オール・ノット」はともに、貧困問題が大きなテーマとしてあげられます。「オール・ノット」では奨学金を使うことができていたが、もしもそれが使えなかったら…。「希望が死んだ夜に」ではより深く貧困問題の奥底に触れ、その現状を知ることができます。
わたしたちは生まれもとで格差が起きることを避けられない。だけれど、貧困である人に対して、私たち社会に何かできることなないか、もしその場面にいざ直面して手を差し伸べられるか、「希望が死んだ夜に」を読むと、より考えさせられきっと行動を起こしたくなると思います。
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