5000日後の世界 すべてがAIと接続された「ミラーワールド」が訪れる(ケヴィン・ケリー)の次に読む本

あらすじ

本書のタイトルにある「5000日後」とは、ソーシャルメディアの始まり(2006年:Facebookの一般登録開始年)から現在(本書インタビュー実施の2019年)の時を表す言葉だ。ソーシャルメディア開始年からさらに5000日(13年強)さかのぼる1993年は、日本でインターネットの商用が開始された年だった。
では現在から5000日後の2032年ごろ、世界はどのように変化しているだろう。
インターネットの黎明期から雑誌『 WIRED』の創刊編集長を務めた著者のケヴィン・ケリーによれば、それはすべてのものがAIと接続されたAR(拡張現実)の世界、「ミラーワールド」だ。GAFAとは異なる新たな巨大プラットフォームにより、 別々の場所にいる人々が地球サイズのバーチャルな世界をリアルタイムで一緒に紡ぐ世界。
クリーンミート、アグリテック、自動運転、スマートシティやスマートカンパニー、ドローン、ブロックチェーンとNFT、クリーンエネルギーなど、既に5000日後の世界に向けた変化は始まっている。かつてスマホが世界を一変させたように、ミラーワールドは人間同士の関係性や余暇の過ごし 方、人生観までも大きく変えていくはずだ。

そら丸
そら丸

著者のいうミラーワードとはAIを活用したARの世界観。フィジカルな世界も考慮すれば、VRでなくARということは納得ができます。インターネットだけでなく、各種センサーを通して現実世界からの情報もリアルタイムに解析し、個人に最適な形で提示される。バーチャルとリアルが同期するので、より豊かな多様性と価値をもたらす可能性を秘めています。ただしその分実現難易度は、技術面だけでなく倫理的観点や政治の視点からも高くなります。かつてのグーグルグラスのように、個人情報含むユーザーニーズと自社のこだわりの調整に失敗すると、普及させるのは難しくなります。このミラーワードを切り開くトッププレイヤーはGAFAではないということは、歴史が証明しています。変化を恐れて保守的になるよりも、新たな時代を楽しもうとするマインドが個人にとっては最も大事なのではないでしょうか。

次に読む本

ネオ・サピエンス誕生(服部 桂ほか)

攻殻機動隊などのSF作品に描かれている、テクノロジーによる人間の能力拡張。この最新動向を研究者、ジャーナリスト、ミュージシャン、アスリートなどへのインタビューから紹介し、人類の未来を考察する機会を提供しているのが本書だ。テクノロジーとしてのメディアを人間拡張という視点から捉え直すことは、拡張を望む人間自体の新しい理解に行き着く道なのだ。

そら丸
そら丸

攻殻機動隊に影響を受けた稲見教授の光学迷彩マントって、ドラえもんの「隠れマント」ですよね。現代の先端テクノロジーは、ドラえもんの道具にだいたい存在するのです。それは人間の際限ない欲望を実現する手段。実現できていないテクノロジーは多くの場合、コストや倫理・法律面での問題が障壁になっていることが多い印象です。これだけ普及したスマホも電車内で皆片手に持って覗き込んでいる姿は不自然でないですかね?20年ぐらい前に電車内で広げていた新聞同様、20年先未来からみた今のスマホはきっと不自然な代物になっている気がします。

そら丸
そら丸

メタバースやNFTといったテクノロジー関連のバズワードがメディアを騒がせていますが、今回取り上げた2冊を読むと、その根底にある本質――能力拡張、課題解決に向けた人間の欲望と、様々な産業でのテクノロジー活用による地殻変動の動きがよくわかります。その多くは既に何十年も前のSF作品の中に描かれていますよね。

最新テクノロジートレンド、人間の根源的欲望、SF作品。この3つを読み解くと、10年単位の未来への理解がすすむのではないでしょうか。




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