あらすじ
将棋界のスーパースター藤井聡太三冠と、伊藤忠商事の会長・社長を務める丹羽宇一郎さんの対談本。
藤井三冠の生い立ち、将棋との出会い、対局での勝利の喜びや敗北の悔しさを、次の対局にどう生かしているのか、棋力を向上させるための研究方法など、棋界を席巻する天才の、将棋への考え方が明かされている。
また、コンピューターの自主製作や好きな本など、藤井三冠自身が趣味についても披露。名経営者が対談を巧みにリードして、19歳の素顔と本音を引き出している。
天才って、どんなことを考えているんだろう? ふだんは、どんな趣味を楽しんでいて、どんな本を読んでいるんだろう? みんなが興味を持ち、知りたいことを、藤井三冠がわかりやすく明かしてくれています。
藤井三冠は小学生のころ、地元愛知で行われた将棋イベントで、豊島将之竜王と特別対局に臨み、敗北。その時は将棋盤を両手でつかみながら号泣した、というエピソードが有名。負けず嫌いな人のようです。
対局で負けた悔しさを、飛躍へのバネにするためのベクトルの向け方が参考になります。対局での敗因をとことん考えて分析し、そうして向上させた棋力を次の対局でぶつける。この対談で明かされている姿勢が、現在の竜王戦七番勝負で豊島竜王を脅かすベースになっているんだと、納得できました。
個人的に面白かったのは、読書について。藤井三冠は小学生のころから、沢木耕太郎さんの名紀行文、司馬遼太郎さんが描いた幕末維新の英雄の物語、新聞などもしっかり読んでいたと語っています。
藤井三冠は対局後に「望外の結果」など、とても19歳の若者とは思えない豊富なボキャブラリーでコメントしていますが、この表現力は子供のころからの読書によって培われたのだと推察しました。
また、藤井三冠は対局に向けた研究方法や、棋士の間で流行っている将棋のAIソフトの使い方も語っていて、将棋ファンや棋力を上げたい人にはとても参考になると思います。
次に読む本
「刑務所なう。」(堀江貴文)
IT企業ライブドア創業者で元経営者、堀江貴文さんの獄中記。2006年に証券取引法違反容疑(ライブドア事件)で東京地検に逮捕され、2011年に懲役2年6月の実刑判決が確定。2013年まで長野刑務所に収監された堀江さんが、獄中での生活ぶりや感じたことを赤裸々につづった作品。
受刑者としての仕事、毎日の食事メニュー、さらには就労後の余暇時間で読める本や、鑑賞できるテレビ番組や映画など、「入った者しか分からない」収監生活の内情も明かされている。
これまでも犯罪更生者の方の獄中記は多く出版されていますが、堀江さんの作品は「ライブ感」に溢れていて、ものすごく面白い。
手紙は刑務所内から出すことが可能なため、堀江さんは、獄中で経験した内容を日記風にびっしりと書き、シャバの編集者やスタッフに送る。受け取ったスタッフがメールマガジンやTwitterで、まさに獄中からの「なう。」な情報を発信。これが本にまとめられているんですが、このバイタリティーに感心します。
人として極限の状態に置かれているだけに、つづられた内容の多くが食事のメニューについて。「これはとても美味しかった」「このオヤツ、また出ないかな」。獄中生活の唯一の楽しみを細かくつづっていて、刑務所ではこんなモノが食べられるんだと驚きました。言い方は悪いですが、生々しくて、とても身につまされます。
棋界のスーパースター藤井三冠の天才性とは違う、堀江さんの起業家としての天才性が感じられることがオススメする理由です。
堀江さんはライブドアをはじめ、釈放後も宇宙ロケット開発事業を立ち上げるなど、精力的な起業家。受刑者の身であっても、その逆境をいかに乗り越えて、次への飛躍に繋げるか。その思いが伝わってきます。
堀江さんが思いをつづった文章には、受刑者としての日々の生活のほか、オリの中でひらめいた新しいビジネスのアイデアなども詳細に記されています。
この獄中で考え続ける姿は、藤井三冠が棋力の向上に努力を惜しまない姿勢に通じるものがあり、ビジネスマンにも仕事の仕方や生き方への参考になると思います。
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