十の輪をくぐる(辻堂ゆめ)の次に読む本

あらすじ

主人公・泰介は苛立っていた。同居する母・万津子は認知症が悪化しているし、妻や娘との会話も上手くいかない。会社では場違いな部署に配属された上、年下の上司や同僚にはバカにされる。そんな日々を送っていたあるとき、万津子が呟いた「私は……東洋の魔女」の言葉から、泰介は母親の過去に思いを馳せ始める。現代の息子、過去の母の2つの視点から、謎に包まれた万津子の人生、そして泰介の生い立ちが明らかになっていく。

はつゑ

バレーボールが好きな一人の女性の物語、と捉えて読み進めていましたが、良い意味で予想を裏切られます。母・万津子の人生、娘・萌子ととの関わりから泰介の生き方が変わっていく様子に、心が大きく動かされました。若かりし万津子が話す大牟田弁、紡績工場や炭鉱での労働環境、『もはや戦後ではない』の時代背景が細かく描かれており、瞬く間にあの時代へと引き込まれる作品です。

次に読む本

大人のADHD もっとも身近な発達障害

子どもの「病気」とみなされてきたADHD(注意欠如多動性障害)。思春期以降に改善するケースがある一方で、成人になってからも症状が継続し、就労してから問題が明るみに出るケースが後を絶たない。そんな「大人のADHD」について臨床的な側面が解説され、実際の症例についても取り上げられている。全員に治療が必要な「病気」ではない。でも日々の生活が苦しい。そんなADHDの人、その家族の助けになる一冊。

はつゑ

『十の輪をくぐる』で娘・萌子が父・泰介とじっくり話す場面があります。話題はADHDである友人のこと。「『この世の中には、普通の人もいないし、異常な人もいない。どんな脳の特性も、人間社会にとって必要なものだからこそ、今の今までDNAが残ってるんだよ』っていうスクールカウンセラーさんの言葉に、感動して泣いちゃったんだって」。泰介と同じ症状に悩む私は、この場面で泣いてしまい、そして救われました。萌子を通して優しいメッセージを送る著者に感謝するとともに、彼女が参考にされた一冊を読みたいと思い、次の本として参考文献からこちらを選びます。後ろ向きに考えがちだったこのテーマを、優しくあたたかい気持ちで勉強することができそうです。




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