夜の道標(芦沢央)の次に読む本は、私を知らないで(白河三兎)

あらすじ

一九九六年、横浜市内で塾の経営者が殺害された。早々に被害者の元教え子が被疑者として捜査線上に浮かぶが、事件発生から二年経った今も、足取りはつかめていない。殺人犯を匿う女、窓際に追いやられながら捜査を続ける刑事、そして、父親から虐待を受け、半地下で暮らす殺人犯から小さな窓越しに食糧をもらって生き延びる少年。それぞれに守りたいものが絡み合い、事態は思いもよらぬ展開を見せていく―。

八重桜
八重桜

芦沢央さんが作家デビュー10周年の節目に書き上げた作品になります。非常に考えさせられるミステリーでした。

登場人物の心情が痛いほど突き刺さってきます。読んでいて自分は胸が苦しくなりました。苦しくなるのですが、目を背けるわけにはいかない、そう思わせる作品です。

本作ではある社会問題が取り上げられているのですが、この背景を知っていて、実際に肌で感じていた年代の方ですと、当作品はさらに深みを増すのかなと思います。

そしてやはり芦沢央さんの文章力が圧巻です。心にスッと入り込み、染み渡るような表現が散りばめられており、終盤の勢いにはグッと引き込まれました。

夜の道標というタイトルに込められた意味が読み進めるにつれて段々と明らかになっていきます。それぞれの登場人物の行く末をぜひ、見届けてください。

次に読む本

私を知らないで 白河三兎

中2の夏の終わり、転校生の「僕」は不思議な少女と出会った。誰よりも美しい彼女は、なぜか「キヨコ」と呼ばれてクラス中から無視されている。「僕」はキヨコの存在が気になり、あとを尾行するが…。少年時代のひたむきな想いと、ままならない「僕」の現在。そして、向日葵のように強くしなやかな少女が、心に抱えた秘密とは―。メフィスト賞受賞の著者による書き下ろし。心に刺さる、青春の物語。

八重桜
八重桜

自分はこの作品を中学生の頃に読了したのですが、深く印象に残っており、それ以降も度々読み返しています。

本作品はすごく苦しい状況の中で生き続けている中学生たちを描いた物語です。

大人びた価値観を持ってしまった子供は、自分達の力ではどうしようもできない事態に直面した際、必要以上に無力感を感じてしまうことがあると思います。そんな彼らのやるせなさを表現しつつ、巧みな文章で書き上げたのがこちらの作品です。

家族や友達のあり方、そして生き方の指針のヒントが数多く散りばめられており、読了後には色々と考えを巡らせてしまうことでしょう。どうか主人公たちの未来に幸がありますように。

おススメポイント

八重桜
八重桜

共通項として

・どちらの作品も実際の社会問題を取り上げており、現代を生きる私たちが知っておく必要のある問題であること
・両親をはじめとした家庭環境などに振り回されてしまった子供たちがどのように生きていくかを如実に描いていること

が挙げられます。仔細は違えど、不条理な境遇に身を置くことになってしまった彼らがどのように歩んでいくのか、ぜひ見届けていただきたいと思います。

どちらの作品も読み応え十分で、読了後にはさまざまな思いを咀嚼する時間が必要なことでしょう。ただ、そういった時間もまた、読書でしか得られない貴重な経験の1つになりますね。




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