あらすじ
二度の大戦で都市のほとんどが壊滅した未来の世界。人類は7つの復興優先地域〈ユニオン〉で暮らしており、なかでも六番ユニオンでは、政府による厳しい情報統制が行われていた。
機械の翼を自在に操る元兵士の少女・スピカは、民間軍事会社の傭兵として雇われながら、違法郵便物を配達して借金を返す日々を送っている。過酷な生い立ちから文字の読み書きを学んでいないスピカだったが、依頼を通して言葉や文字にのせられた多くの人々の思いに触れ、心境が変化していく。やがてスピカは反体制組織の面々と知り合い、時代を揺るがす革命に大きく関わることになる…。

SFを読み慣れていないこともあり、作品に入り込むのに少し時間がかかったが、世界観が理解できると楽しく読めた。
兵士であった頃、多くの人間を死と悲しみの底に追いやったことに強い責任を感じているスピカ。しかし彼女もまた過酷な時代と運命とに翻弄され、愛する家族や平穏な生活、教育を受ける機会を奪われた被害者の一人であることが哀しい。
身体機械化によって涙腺さえもなくしたスピカが、物語が進むにつれ、他者との交流や自身の人生に対して少しずつ積極的になっていくのがよかった。
次に読む本
星の教室(髙田郁)
同級生からのいじめにより、中学時代を不登校で終えてしまった主人公の潤間さやか。義務教育を終えていないことが枷となり、日々生きづらさを感じていた。
そんなある日、様々な事情から中学生をやり直す大人たちを受け入れる〈河堀夜間中学〉の存在を知る。前向きな決意を抱いて入学したさやかは、年代も背景も様々な仲間たちとともに、学びに励む毎日を送りはじめる。
温かな学校生活で少しずつ心がほぐれ、明るさを取り戻していくさやか。やがて将来の夢も芽吹きはじめて…。

さやかが夜間中学入学へ一歩踏み出したとき、思わず応援したくなった読者は私だけではないだろう。
さやかの新たな仲間となる同級生たちも皆、個性豊かで愛すべき人ばかりだ。背景も年代も様々で、それぞれが痛みや苦しみを抱えつつも懸命に生きている。教室での温かなやり取りやエピソードからさやかが得た気づきは、そのまま私たち読者の気づきにもなっていると感じた。
必要な時分に十分な教育を受けられなかった人たちにとって、星明かりに照らされたこの学び舎がどれほど大きな拠り所になっているだろうか。
本編だけでなく、あとがきからも、著者の夜間中学に対する敬意と思い入れの深さが伝わった。
おススメポイント

繋がりはタイトルに「星」が入っていること!……というのは偶然で、いずれの作品にも、言語表現を自由に行えることの尊さが鮮明に描かれていると感じた。
「燃える夜空に星ちりばめて」のスピカは、自身の思いを上手く言語化できないことに苦しんでいる。また、スピカと同じ六番ユニオンで暮らす人々も、不本意ながら複雑な思考や文章表現ができない状態に陥っていた。
「星の教室」では、さやかの一学年下に識字クラスがある。様々な事情で文字の読み書きができないまま歳を重ねた生徒が籍を置き、授業は「あ・お・ぞ・ら」の音読から始まる。「文字を読めない、書けないーーそのことが、あのひとたちに、どれほどの過酷な人生を強いたのか。考えてみてね」という担任教師の一言が心に刺さった。
文字や言葉を知っていること。そして、それらを用いて知識や思考を自由に深めていける日常は、決して当たり前ではない。
一方はSF、もう一方はノンフィクション寄りのフィクションだが、ジャンルの違いを超えた深い親和性があると感じ、両作品を選んだ。
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